岸五郎は、明治25年7月に
東京工業学校(現
東京工業大学)応用科学課を卒業後、明治26年に埼玉県久喜町の荒井伊兵衛酒造場にて醸造実習しながら研究を推進しました。
醸造技師を務める傍ら、醸造用水加工や酵母の培養についての研究を続け、その集大成として明治27年、酒造りについての専門書「醸海拾玉(じょうかいしゅうぎょく)」を発刊しました。
この「醸海拾玉」は当時、杜氏の勘に頼っていた酒造りを化学的見地から説いた酒造り教本で、特に醸造用水の加工研究は、軟水による酒造りをいち早く可能にしました。
また、初めて酒母製造に乳酸を添加応用し、これが醸造界の大発明といわれ現代酒造りの基本となっている「速醸もと(そくじょうもと)」として全国の酒蔵で使用される様になりました。
「酒母への乳酸添加応用」は野生酵母を排除、適正酵母の純粋培養に成功し、当時恐れられていた腐造を防ぐことを可能にしたことで醸造業界に大きな旋風を巻き起こしました。
清酒造りの工程で、出来上がった麹と蒸米と水、そして酵母菌を入れて出来たのが酒母(しゅぼ)で、酒の元になるところから「もと」と呼ばれています。
また、この中には酵母の働きを邪魔する雑菌類から守るため、乳酸が入れられるのですが、この乳酸の入れ方により2通りの造り方があるのです。
速醸もと・・・・酒母の水麹の段階で適量の乳酸を添加し雑菌の繁殖を抑え、同時に大量の優良酵母を加えて、酵母の純粋培養を図る方法です。
生もと・・・・・・仕込み時に乳酸を添加せず、乳酸菌の生育を上手に誘導して酒母中に乳酸菌を生成させて酵母を純粋に培養する方法です。
「もと造り」に要する日数は、「速醸もと」で約15日、「生もと」だとその倍近くかかるといれており、その昔、生もと(きもと)も山廃もとも醗酵過程で様々な微生物を育てながらもとを造り、30~40日もかかる上、不要な微生物が発生し、もと造りが失敗する場合もあることから、今日では乳酸ですべての細菌類繁殖を防ぎ、純粋培養された清酒酵母を加え、安全に短期間〔約15日〕で酵母を純粋培養し、酒母を造る方法が清酒醸造界では多く取り入れています。
これが現在の清酒の酒造りの主流「速醸仕込み」であるのです。
この速醸もとを最初に酒つくりの中で実践していたのが、創業者「岸五郎」です。
明治27年、その集大成として、酒造りについての専門書「醸海拾玉(じょうかいしゅうぎょく)」を発刊しました。
この「醸海拾玉」は当時、杜氏の勘に頼っていた酒造りを化学的見地から説いた酒造り教本で、特に醸造用水の加工研究は、軟水による酒造りをいち早く可能にしました。
また初めて酒母に乳酸を添加応用し、酵母の純粋培養を試みた、この技術は、江田鎌次郎氏により体系付けられ、醸造業界の大発明といわれた「速醸もと」の原型となっており、今現在、多くの酒蔵で使用されるようになりました。
このような功績により、創業者 岸五郎は、醸造協会主催第1回全国清酒品評会の主任審査員及び主任評議委員を務め、昭和16年には醸友会全国醸造技術功労者第1号を頂き、昭和33年には醸造界初の黄綬褒章を受賞しました。